「令和4酒造年度全国新酒鑑評会 金賞受賞酒」の販売を開始しました。

2023年9月27日

令和4酒造年度全国新酒鑑評会 金賞受賞酒720ml(税込価格11,000円)

(オンラインショップ販売ページはこちら)

 

醉心山根本店 沼田東工場:杜氏  橘義光

広島県中央部の山奥で、前世紀の終わり頃に見出した「稀に見る軟水」。その時から、幾人もの匠の手で積み上げられた醉心独自の「超軟水仕込み」の酒造りの技。兵庫県三田市で契約栽培された山田錦を30%にまで磨いて醸した大吟醸は、令和4酒造年度の全国新酒鑑評会で見事、金賞を受賞しました。キメ細やかで芳醇な風味。よく冷やして、ワイングラスでお楽しみ下さい。

 

【お米について】

この商品のお酒造りに使っているお米は、兵庫県三田市産「山田錦」です。毎年、三田山田錦部会の方々が契約栽培してくださったお米を仕入れています。では、このお米に出会った経緯をお話しすることにします。

昭和30年代前半のある日、旧三田農協(現JA兵庫六甲)の方が、わざわざ醉心を訪ねて来られました。当時はまだ兵庫県内でしか販売されていなかった三田市産の酒米「山田錦」を兵庫県外にも販売することとなり、最初に醉心を訪ねて下さったのです。その頃、まだ「山田錦」は全国的にそれほど名の知れた酒米ではありませんでした。しかし、応対した醉心4代目当主・山根卓三には、何か感じるものがあったのでしょう。その年の酒造りで試験的に使ってみることにしたといいます。結果はすこぶる良好で、その翌年の酒造りから広く三田市産「山田錦」を用いるようになったのです。以来60有余年、醉心は兵庫県三田市で契約栽培された「山田錦」を使用し続けているのです。

「山田錦」は粒が大きく、その中心には「心白」と呼ばれるテンプン質に富んだ部分があり、酒造りに非常に適したお米として、現在では多くの酒蔵で使用されています。特に、三田市を含む六甲山系の北側の地域の気候や土壌は「山田錦」の栽培にとても適していると言います。その田圃の土は黒く、長年の土づくりの成果を示すものと言え、栽培者の方々の意気込みを感じ取ることができます。

毎年、真夏の時期、醉心の社長は「山田錦」の生育状況を拝見するために三田市を訪ね、田圃を見学しています。また、その年に収穫された「山田錦」の品評会が毎年12月に開催されますが、この場にもお伺いしています。この品評会で優良とされたお米の栽培者さんには各種の賞が贈られますが、その一つに「醉心山根本店社長賞」があります。これらの賞は翌年3月開催の「三田山田錦部会総会」で授与されることとなります。毎年、この総会にも出席して、「醉心山根本店社長賞」を授与された栽培者さんに賞状を手渡しさせて頂いております。

 

【お水について】

この商品の仕込みに使った原料水は、広島県中央部にそびえる鷹ノ巣山(標高922m)の麓の井戸で汲み上げたお水です。時間をかけて汲み上げた後、片道約1時間をかけてローリーで酒蔵まで運んでいます。では、この水に出会った経緯をお話しすることにします。

創業以来、醉心は地元・三原の井戸水を酒造りに使ってきました。その水は「軟水」。ミネラル分が比較的少なく、お茶を淹れるとおいしい水だったと聞いています。そして、この水こそが、当時の醉心のお酒のやわらかくなめらかな風味を生む源であったと言えるのです。

しかし、20世紀の終わり頃、重大な問題が発生しました。これまで醉心のお酒造りに使われてきた井戸水の水質が変化していることがわかったのです。なんと、水に含まれるミネラル分が増え始めていたのです。このままでは、お酒の風味が変わってしまう。蔵を揺るがすような大問題でした。後になって知ったことですが、軟水は豊かな緑があってこそ育まれる水とのこと。醉心が所在する三原市も市街化が進み、かつては豊かな緑に覆われていた土地が道路や宅地に変わっていました。井戸水に変化が表れることは必然であったのかもしれません。

そこで、新たな軟水の水源を探索する活動が始まりました。始めは三原の旧市街地周辺部を探索しましたが、求める水質の軟水が豊富に得られる水源を見出すことはできませんでした。そこで探索の範囲を三原市周辺の本郷町、久井町、そして大和町へと広げて行きましたが、やはり思う様な軟水の水源を見出すことができず、焦燥感のみが積もる毎日でした。

水の探索を始めてより数年、ついに広島県中央部の福富町に辿り着きました。酒蔵より車で約1時間の距離にあるところで、酒造期に水を輸送することを考えるとギリギリの距離でした。そして、鷹ノ巣山の麓に清冽な澤が流れている場所を見出したのです。澤には水草がほとんど繁茂してなく、流れる水がかなりの軟水であることを暗示していました。祈る思いで、澤の傍らに井戸を試掘して、汲み上げられた水でコーヒーを沸かしました。軟水はお茶などを淹れると美味しい水と聞いていましたので、これまで井戸を試掘する度に、汲み上げられた水でコーヒーを沸かして来たのです。そして、鷹ノ巣山山麓の井戸水で沸かしたコーヒーは、これまでに体験したことがないほどの美味でありました。

そこで、水の権威である旧広島電機大学・教授の故佐々木健先生にこの水をご検分頂きました。水に含まれるミネラル分の量を硬度という指標で表し、WHOの基準では硬度120以下を軟水としています。鷹ノ巣山山麓の井戸水の硬度は14、「稀に見る軟水」とのご評価を頂いたのです。

水源と思われる鷹ノ巣山の頂付近には、ブナの原生林が広がっています。これに因んで「ぶなの恵み」と名付けられたその水は、醉心の風味をかたち造るための新たな源となったのでした。