2025年12月8日
「醉心の純米吟醸生原酒」
フレッシュな香り、余韻を楽しむ味わい
醉心は、他に先駆けて純米吟醸を世に送り出した酒蔵です。また、早くから生酒にも取り組んでおり、純米吟醸の生酒はその中核を担って来ました。その最たるものは「生吟醸」と名付け、主として夏期に販売していた蔵元直送のお酒です。そして、これに劣らぬ人気を博して来た生酒が、毎年、新酒が出始める師走の頃に発売している搾りたての「純米吟醸生原酒」。約30年前に発売して以来、時代にあわせて姿を変えつつ今に続くお酒です。
本年の10月初旬、今年度(令和7酒造年度)の酒造りが始まりました。その後、数本の醪(もろみ)が仕込まれた後の10月の終わり頃、本年の「純米吟醸生原酒」を造るための醪の仕込が始まりました。醪を仕込むとき、酒母(しゅぼ)、麹(こうじ)、蒸し上げた白米(蒸米)、そして水が1本のタンクに合わされます。これらのうち、麹、蒸米、水の3つは3度に分けて仕込まれます。3度目の仕込を終えてより20数日、長い時には30日前後の日時を掛けてじっくりと発酵させた後に醪を搾ると、澄んだ純米吟醸の生原酒が得られるのです。
ここで、酒母とは、お酒造りを担う微生物の一つである清酒酵母を大量に含む“種”のようなもの。醪に先立って、麹や蒸米を原料とし、これに純粋培養された清酒酵母を加えて発酵をすすめることで造り出されるものです。因みに、「純米吟醸生原酒」を造るための酒母では、お米は「山田錦」、清酒酵母は協会9号系の酵母が用いられています。
麹は、麹菌を蒸米の上で2昼夜ほど培養して出来るものです。麹には、醪のなかでお米を分解する酵素や、お酒の風味となる成分などを供給する役割があります。酒母と同様、麹造りに使われるお米も「山田錦」。醉心が使う「山田錦」は兵庫県三田市で契約栽培されたお米。三田山田錦部会の皆さんが丹精込めて栽培されたお米です。
ところで、醪に直接投入される蒸米のことを掛米(かけまい)と呼びます。早朝に蒸し上げた白米を急速に冷ました後に、醪に加えます。純米吟醸生原酒を造るための仕込で掛米として使うお米は、広島県産のうるち米。正直、本年は非常に苦労して集めました。例年にも増して、一粒一粒が貴重です。酒母、麹、掛米に使うお米はいずれも精米歩合60%。即ち、もとの60%にまで磨いた白米が、この酒造りには使われています。
最後に、水。広島県の中央部にそびえる「鷹ノ巣山」の麓にある井戸で汲み上げたお水を使用しています。このお水は、水の専門家より「稀に見る軟水。“超軟水”と呼んでよい」と評されたものです。余分なミネラル分を含まないピュアなお水、と言えましょうか。私たちの超軟水を使うと、醪の発酵はゆったりと進み、搾ったお酒はキメ細やかでなめらかな風味に仕上がります。また、得られる酒粕は艶やかな乳白色で、品の良い風味。醉心では、毎年2月に催される三原市のお祭り「神明市」でのみ酒粕を販売していますが、大変な好評を頂いております。これらはこの超軟水によってこそ為されるもの、私たちはそう確信しています。
本年11月の終わり頃、「純米吟醸生原酒」を得るための醪を搾りました。圧搾機から流れ出でた新酒は、薄く黄緑に色づき、光を受けるとキラキラと輝いて見えました。その傍に佇むとメロンのようなフレッシュな香りが漂い、口に含むとキメ細やかでなめらかな味わい、そして余韻にお米の旨味が感じられました。
お食事に、ちょっと贅沢なお酒を添えてみよう、そんな時におすすめ。冷蔵庫でよく冷やして小振りのグラスに注ぐと、清涼感溢れる風味が引き立ちます。品の良い旨味の食材と合わせて、どうぞ。
実は、このお酒は醉心の様々な商品の“源”でもあります。
まず、頭に浮かぶのは、醉心を代表するお酒「純米吟醸 醉心稲穂」。冒頭で触れた、醉心が他に先駆けて発売した「純米吟醸」が、その姿を変化させつつ現在に継承されたお酒です。和洋を問わず、様々なお料理の相方となる、正に“お米の代わり”となることを使命とする食中におすすめのお酒です。
このお酒の醪を搾るとき、最初は機械的な圧力を加えなくても、圧搾機に醪が流れ込む勢いで清酒が濾されて流れ出てきます。この部分のみを集めたお酒を、醉心では「無圧搾り」と呼んでいます。このお酒、春夏秋冬のそれぞれの時期に、季節ごとに特徴的なお酒に仕上げて販売しております。今は冬、「純米吟醸 醉心無圧搾り 冬」が販売の時期を迎えているところです。


